雑多拾いもん

捨てる神あれば拾う神あり… 「博多通りもん」ならぬ、雑多な「拾いもん」について備忘録がてら綴っています。

イルカとクジラと玻璃長石

新年明けてから3月末までは仕事が忙しくなるため、この時期は毎年出かける元気がなくなるのですが、折角の3連休なので、今回は玻璃長石を探しに和歌山県太地町へ行く事にしました。

この産地の玻璃長石は、大阪地域地学研究会による「宝石探し2(東方出版)」でも紹介されており、この本を読む限りでは比較的簡単に拾えそうな印象です(※)。

※このブログにおける拾った石の産地等については、一般販売・流通している書籍等により公になっている情報のみ記載しております。なお、古い書籍の場合、出版後に採集が禁止になっている場所が多くありますので、必ず最新情報の確認をお願いします。

さて、上記書籍の情報を頼りに、玻璃長石の産地に到着。

自分が今まで石拾いに行った場所は、山を歩いてガマ掘りをしている方からすれば楽な産地ばかりだと思いますが、それでも周りに民家等はなく、スマホの電波も入るか入らないか微妙な場所ばかりでした。

しかし、この玻璃長石の産地は、民家のすぐ脇にあるちょっとした露頭です。しかも露頭と言っても、高さのある崖ではなく、何というか、よく田舎の道路脇や裏山なんかに小さな観音堂地蔵堂が置かれていたりしますが、雰囲気的にもサイズ的にもそんな感じの小さな露頭なのでした。

f:id:cetriolo:20240225153423j:image(小さな露頭)

足元には、風化してボロボロになった花崗岩の真砂土と、風化せずに残ってそこから外れた玻璃長石が落ちています。

f:id:cetriolo:20240225155529j:image(殆どがカールスバッド双晶となっている)

普通の鉱物産地と異なり、民家が何軒もすぐ傍にありますので、熊やヒルとの遭遇も、遭難や電波が圏外になる危険もありません。また、お目当ての玻璃長石もどんぐりや銀杏を拾う要領で簡単に拾えます。

ですから自分のようなぼっち・ざ・ろっく(石)には丁度良い産地ですが、趣味の仲間達とワイワイ楽しみながら探したい方や、採集は岩石ハンマーを振るってなんぼという方には向かない場所でもあります。

とは言え、あまりにも民家が近いのが気になります…。知らない人から見れば、コンタクトレンズを落としたわけでもなさそうなのに、何やら地面を凝視している不審者に過ぎません。近隣の方に御迷惑になってもいけないので、気に入ったものを厳選して拾い、15分程度でここを後にする事にしました。

f:id:cetriolo:20240225172643j:image(洗浄後。サイズは1cm〜2cm前後。上中央はムーンストーンと呼んでも良さそうなシラーがある。)

ところで太地町と言えば、一般的には玻璃長石ではなく、クジラ・イルカの町として知られています。太地町捕鯨については様々な意見がありますが、時間もまだありますので、太地町立くじらの博物館」に寄ってみました。

f:id:cetriolo:20240225162523j:image

f:id:cetriolo:20240225175055j:image(よくあるイルカショーとは異なり、イルカの生態や形態のちょっとした解説がある)

博物館は広いので、半日〜1日かけて見るくらいのボリュームです。水族館のような水槽や、イルカ・クジラによるショー等も行われていますが、やはりここは博物館。館内にはイルカの胎児、クジラの眼や臓器と言った部位ごとの液浸標本が沢山ありました。

やや話は逸れますが、自分の地元はイルカを食べる地域でしたので、子供の頃は食卓にイルカの煮物がよくありました。独特の香りがあるので、夕方学校から帰って玄関を開ける前に「おっ!今日の夕飯はイルカだな」と分かるのです。大学生になり地元を離れて、初めてイルカを食べる地域は少ないのだと知り、逆に驚いたくらいでした。

そんなですから、他県出身のクラスメイトから「水族館でイルカを見たら『美味しそう』だと思うのか」という質問を受けた事があります。確かに、イルカを食べる文化圏ではない人からすると、素朴な疑問だと思うのですが、その時の自分はちょっと地元の文化レベルが低いと馬鹿にされたように感じて「ふれあい牧場で子牛や子豚を可愛がっている観光客にも同じ質問をするのか、それと同じだ」と、今思えば感じの悪い返事をしてしまいました。

ただ、そんな自分ですら、博物館の液浸標本は衝撃的で「うっ…」と感じました。ただ、最近の博物館は綺麗になった一方で映像やパネルばかりになって、こういう液浸標本を見る機会は減ったように感じますので、来館者に色々考えさせる貴重な展示だと思います。

f:id:cetriolo:20240225171241j:image(…と複雑な感情になった後で、ちゃっかり白いハナゴンドウに餌やりをする)

イルカの煮物から、学生時代の出来事を思い出した太地町を後にし、今晩の宿泊先である三重県に向かったのでした。

明日は、三重県伊賀市のバラ輝石を拾いに行こうと思います。

アオイガイを探して

休日出勤をした振替として、久しぶりに平日に休みを取る事になりました。

さて…天気も良いし、何処に行こうか。ヒスイ拾いや瓶探しも頭を過ぎりましたが、折角の休みなので今まで行った事のない場所へ行きたいと考え、以前から気になっていた「アオイガイ」を探しに、福井県嶺南の海岸へと行く事にしました。

アオイガイとは、軟体動物門の頭足綱に属し、正確には貝というよりはタコ等の仲間です。メスはアンモナイトの様な貝殻を有するため、その美しく脆い貝殻はビーチコーマー(海岸を歩き、漂流物をコレクションする趣味の方)にとって人気漂流物の一つであり、ボトルディギングで言うところの「神薬瓶」や「ペロペロ」の様な存在となっています。

以前からネット上で拾った方の報告やアオイガイの写真を拝見しては、自分もいつか拾ってみたいと思っていたのでした。

さて、このアオイガイの貝殻は冬場にのみ打ち上がるらしく、また大量漂着する年もあれば、全く漂着しない年もあるという事なので、取り敢えず過去に打ち上がったと報告のあったエリアの海岸へと向かいます。

f:id:cetriolo:20240120083347j:image(冬の日本海とは思えない天気の良さと暖かさ)

最初の海岸では、残念ながら拾いたくなる様な物は無し。落ちている貝も、よく見かける二枚貝ばかりでした。

次の海岸に移動。ここでは、タカラガイの仲間が落ちていました。最初の海岸には一切タカラガイは落ちていなかったので、海岸の形状や消波ブロックの配置等のちょっとした違いで、打ち上がる貝に違いが生じるのでしょう。ここはその他にも色々な貝が落ちていました。

f:id:cetriolo:20240121072407j:image(メダカラやチャイロキヌタ等のタカラガイも落ちている)

f:id:cetriolo:20240121194943j:image(ウニ殻)

f:id:cetriolo:20240121195015j:image(ベニガイ、沢山落ちていた)

しかし、やはりアオイガイはありません。そう簡単に見つからないこそ価値があるのは分かっていますが、こちとら何時間もかけて来ていますから、せめてカケラでも見つけて帰りたいのです。

サーフィンを楽しむ陽キャの人々の声を背中に感じながら、黙々と海岸を3時間程歩きましたが、結局この海岸にもアオイガイはありませんでした。

最後にもう一つ別の海岸へ。ここは今までの海岸よりも小さな海水浴場です。既に日も傾いてきており、焦りながら貝を探していると…

f:id:cetriolo:20240121073847j:image(こ、これは…!)

アオイガイの貝殻の破片を発見。破片とは言え、実際に海岸に落ちているのも貝殻を触るのも初めてで、「すごいぞ!アオイガイは本当にあったんだ!」とまるでラピュタの存在に感動したパズーの様な気持ちになります。

因みに、アオイガイの貝殻はモナカの皮の様に軽くて薄く、簡単にパリッと割れそうなので、そおっと回収しました。

その数分後…

f:id:cetriolo:20240121074252j:image(横4cm)

小さいながら、今度は全体的にアオイガイの貝殻の形状が残っているものを発見。残念ながら上の部分に穴が空いていますが、先程の破片よりもアオイガイだと分かります。

その後も引き続き探しましたが、結局この2点以外には見つからず、辺りも暗くなってきたので諦めて帰宅する事にしました。

今回、3つの海岸を巡りましたが、距離的には大して離れていないにもかかわらず、それぞれの海岸で拾える貝に違いがあったのが不思議でした。

また機会があれば、アオイガイ探しのリベンジと共に、それらの違いが生じる理由も知りたいと感じたのでした。

年間ヒスイ大賞2023

昨年に続き、この1年間に拾ったヒスイの中からお気に入りヒスイのランキングTOP10を紹介し、1年を振り返って行きたいと思います。

  • 第10位

f:id:cetriolo:20240101100137j:image(484g、12月採集)

今日拾った「いぶし銀ラベンダー」。大きさと歴戦の猛者のような雰囲気はありますが、美しさには欠けるため、この順位。ラベンダーのスポットが無ければ海岸でリリースするところですが、ラベンダーのスポットがあったせいで人間に捕まってしまいました。

  • 第9位

f:id:cetriolo:20240101100151j:image(24g、2月採集)

後で登場する「羽生ヒスイ」と同じ日に拾ったヒスイ。白地にネオングリーンのスポットが入っています。

  • 第8位

f:id:cetriolo:20240101104034j:image(31g、5月採集)

ランキング内では唯一の黒が入ったヒスイ。この色合いのヒスイ、拾い始めた頃は良く見かけたのですが、何故かこの1年は殆ど見かけなくなりました。

  • 第7位

f:id:cetriolo:20240101100236j:image(24g、4月採集)

第9位と同じ、白地にネオングリーンが入ったタイプですが、こちらの石の方がグリーンが鮮明です。この石を拾った日は身体が浮きそうなくらいの強風で、T.M.Revolution状態だったのを良く覚えています。

因みに自分は数多あるヒスイのタイプの中でも、この白地にネオングリーンが入ったタイプと糸巻きヒスイが好きな為、このランキングではどうしても上位に来る傾向があります。

  • 第6位

f:id:cetriolo:20240101100335j:image(31g、9月採集)

「横川の青」と呼ばれる、白地に流れるような水色が入った透明感のない青ヒスイ。自分の中では滅多に拾えないので、ちょっと贔屓が入り第6位となりました。

  • 第5位

f:id:cetriolo:20240101100402j:image(68g、5月採集)

第8位のヒスイと同じ日に拾った石。「よもぎヒスイ」とも呼ばれる、薄グリーンに濃いグリーンのスポットが入るよく透過するタイプです。色合いは地味ながら、太陽光でも透過する程の透明感があります。

  • 第4位

f:id:cetriolo:20240101100451j:image(34g、3月採集)

糸巻きの青ヒスイ。普段は滅多に行かない海岸で発見。人気のある海岸の為、沢山のヒスイハンターの方々がいらっしゃいましたが、波打ち際よりやや陸側にポツンと落ちていました。

  • 第3位

f:id:cetriolo:20240101100821j:image(66g、2月採集)

ホタルイカを助けた直後、御礼のように砂浜に落ちていた事から「ホタルイカの恩返しヒスイ」と名付けたヒスイ。写真では上手くこの石の色を撮れないのですが、曇り空の様な青と透過の良さが気に入っています。

なお、その後も打ち上がった小魚等を見つけると海に還してあげたりもしましたが、こちらのゲスな下心が伝わってしまったのか、これ以降に恩返し系イベントは発生していません。

  • 第2位

f:id:cetriolo:20240101100859j:image(90g、2月採集)

第9位のヒスイと同じ日に見つけたヒスイ。自分にしては珍しく、波打ち際に落ちていたのを拾ったのではなく、ヒスイ棒を伸ばして波の奥から拾い上げたヒスイです。前日に羽生九段が藤井竜王王将戦で勝利した事から「羽生ヒスイ」と名付けました。

当時の記事では藤井竜王は五冠(現在は八冠)とありましたので、時の流れを感じます。

  • 第1位

f:id:cetriolo:20240101225233j:image(62g、6月採集)

f:id:cetriolo:20240101101348j:image(裏側)

真っ青な部分と灰色の部分が混ざり合った青ヒスイ。今まで拾った青ヒスイの中では最も深い青ですが、結晶はラメの様にキラキラしており、太陽光でも一部透過する程全体的に透明感があるという、ちょっと変わったヒスイです。

フォッサマグナミュージアムにも似たヒスイの展示はなく、自分の中では珍しいという事で1位となりました。

〈総括〉

f:id:cetriolo:20240101102936j:image(集合)

今年は以前に比べると、ヒスイ拾いに行く回数が激減したため、拾ったヒスイの質やバリエーションは、正直昨年の方が良かった様な気がします。ただ、今年は青ヒスイが多く拾えた年でもありました。

それでは皆さま、来年も楽しく、そして安全な石拾いライフをお楽しみ下さい。

ヒスイ拾い納め

年末恒例のヒスイ拾いに今年もやって来ました。前回のヒスイ拾いが9月末ですから、3ヶ月振りのヒスイ拾いになります。今回は一泊二日で体力の持つ限りヒスイを探す予定ですが、さて念願の妖精ラベンダーを見つける事は出来るのでしょうか。

〈1日目〉

日本海側の冬には珍しい快晴。暖かい上に風もなく、絶好のヒスイ拾い日和。考える事は皆同じなのか、沢山の釣り人やヒスイハンターの方々で海岸は賑わっていました。

f:id:cetriolo:20231231153530j:image(貴重な冬の快晴)

石がしっかり出ており、波高も0.4〜0.5mと冬にしては高くありません。

これだけの好条件ですから、さぞヒスイが簡単に拾えるだろうと思いきや、全くヒスイがありません。

色付きヒスイはもちろん、灰色ヒスイや混じりと呼ばれるタイプすら見かける事なく…

そのまま1日目は終了。

ヒスイを探すのが下手になったのか、波のパターンがヒスイ拾いと相性の悪い(=ヒスイを波打ち際に運び辛い)ものだったのか、既に多くのヒスイハンターの方々に拾われた後だったのか…原因は分かりませんが、とにかく成果はまさかの0。

ガッカリしつつ、ビジネスホテルでNHKの「ドキュメント72時間年末スペシャル」を見てダラダラと過ごしました。

〈2日目〉

朝起きると外は雨。天気予報では夕方まで小雨が続き、夕方以降は雨や風が強くなるという事ですので、ほぼ午前中が勝負です。

海岸に到着すると、悪天候とあってか、昨日とは打って変わって釣り人やヒスイハンターの方々の姿は疎。

波高は0.2m。夏と同じレベルとは言いませんが、波打ち際を落ち着いて歩ける状態です。

f:id:cetriolo:20231231160221j:image(小さな波)

海岸の状態は小砂利や砂の場所が多く、また、時間が経つにつれて砂が被さりつつあるような印象を受けました。

さて、1時間半ほど歩きましたが、1日目同様にヒスイは見当たりません。ヒスイに似たロディン岩や石英も少なく、ヒスイ棒で拾って確かめる作業すら必然的に減っていきます。

ようやく2時間後、波が引いた時の砂の中から怪しい石が少し見えたので、ヒスイ棒で掘り起こすと…

f:id:cetriolo:20231231161822j:image(484g、比重3.12)

濃い紫のスポットのある、大きなラベンダーヒスイでした。

薄い灰色〜グリーン地に海焼けや沸石が抜けた後の穴があるタイプで、盆栽が似合いそうな渋いルックスのラベンダーヒスイです。

残念ながら、こちらは「妖精ラベンダー」と呼ばれるタイプではありません。寧ろ「妖精」なんてファンシーさとは真逆の渋さなので、「いぶし銀ラベンダー」と名付ける事にします(銀なのかラベンダーなのか紛らわしい名前)

その30分後に、今度はまたも海焼けのある白地に薄いグリーンの入った、あまり透明感のないヒスイを見つけました。

f:id:cetriolo:20231231163702j:image(19g、比重3.16g。写真ではロディン岩のような色合いに写ってしまった)

しかし、その後はパタリとヒスイは見つからなくなりました。別の海岸に移動しても変わらずで、昼過ぎには雨が強くなってきたので諦めて帰る事にしました。

結局、2日間で渋いラベンダーヒスイと小さな白ヒスイの2つだけ…というやや寂しい結果の拾い納めとなりました。

ただ、仕事の事を一切考えず、波の音を聞きながら一心不乱に石を拾うというのは、やはり楽しいものです。

今年もあと数時間で終わり。次回の記事では、昨年に続き「2023年お気に入りヒスイランキングTOP10」で、この1年間で拾ったヒスイを振り返りたいと思います。

東京ミネラルショー2023

とうとうこの日がやってきました…そう、東京ミネラルショー(通称「池袋ショー」)の開催です。

9月末以降、天候や時間の都合から、なかなか糸魚川へヒスイ拾いに行けなかったので、それも相まって自分は今回の池袋ショーを楽しみにしていたのでした。

10:02 現着

大阪ショーや京都ショーでは開場後も受付で結構並んだので、少なくとも30分は並ぶだろうと覚悟していましたが、今回の池袋ショーでは3つの会場全てに受付が設置された事で来場者が分散したためか、自分が受付をした第3会場では、全く並ぶことなく入場出来ました。

f:id:cetriolo:20231209220037j:image(今回のショーの看板、何となくオリンピック感がある)

今回のショーでは、ミュンヘンショーの後だからでしょうか。ドイツやフランス、スペイン等のヨーロッパの鉱物標本が目立った気がしました。特に、ミメット鉱、アダム鉱、燐灰ウラン鉱を並べていた店が多かった気がします。

さて、今回の池袋ショーで探すのは以下の標本です。

このように毎回ミネラルショーに行く前に、自分なりに欲しい標本をリストアップするのですが、リストとはかけ離れた標本を購入してしまうのが恒例となっています。

で、購入したのはこちらの5つの標本。

f:id:cetriolo:20231209224854j:image(珍しくリストとの乖離が少ない)

開場後にまず向かったのはスリランカの業者さんのお店。このお店はお小遣い価格のものから高級なものまで、幅広い価格帯のコランダムを販売しており、5月の新宿ショーでは、会場を一周した後で買おうと思ってお店に戻ると、目星を付けていたお小遣い価格の標本が丁度目の前で売れてしまった…というほろ苦い思い出(?)のあるお店です。

今回もリーズナブルなコランダムが沢山トレイに入っていましたので、今回はその中から気に入った標本を選んで直ぐに購入。過去の反省を活かし、今回は「悪・即・斬」ならぬ「石・即・買」です。

f:id:cetriolo:20231209220923j:image(2.1cm×0.5cm。小さい標本だが、照りの良さと深い青が気に入っている。)

  • パエジナストーン(イタリア)

次に向かったのは、フランスの業者さんのお店。こちらは毎回ミネラルショーでパエジナストーンを販売しています。新宿ショーでも廃墟街に見えるうら寂しい景色のパエジナストーンを購入していますが、海や湖に見えるタイプをネット上で見かけて欲しくなったのでした。

新宿ショーでは山脈か廃墟街に見えるタイプのものがメインで並んでいましたが、今回は海や湖に見えるタイプのものがいくつもありました。

その中で、今回自分が購入したのはカルデラ湖に見えたこちらの石。

f:id:cetriolo:20231210224014j:image(6cm×4cm)

自分は立山のミクリガ池を思い出しましたが、皆さんにはどのような景色に見えるでしょうか。

f:id:cetriolo:20231209223333j:image(左下の凹んだ部分も似ている気がする)

今回の池袋ショーで唯一、国内業者さんのお店で購入した標本。トルマリンは常に見ていますが、こちらの希望に合った色やサイズの物が少なく、ようやく見つけても高額だったりで中々手が出せませんした。そんな中、こちらの標本はパステルカラーのウォーターメロンタイプで母岩付き、しかも自分の様な小市民にも手の届く良心的な価格…という事で、ここは迷わず購入。トルマリンのサイズや母岩とのバランス等、とても気に入っています。

f:id:cetriolo:20231209233901j:image(4.2cm×3.8cm、母岩の薄紫色はリチア雲母と思われる)

モーリシャスの業者さんのお店では、昔の標本やツメブ鉱山の標本を取り扱っていました。

ツメブ鉱山と言えば「鉱物のデパート」と呼ばれ、様々な美しい鉱物標本を産出した事で有名です。しかし、自分は1つもツメブ鉱山の標本は持っていません。

そこで今回、ツメブ鉱山標本の並んだ箱の中から、薄桃色のスミソナイトを選んで購入。曇りガラスの様な質感で、ずっしりと重みがあります。

f:id:cetriolo:20231210075556j:image(3.0cm×3.5cm、和菓子の様な標本。母岩はガレナ。)

ウクライナの業者さんのお店では、今回の欲しい標本リストの1つであるバイカラー(青と橙)のトパーズを大量に販売していました。ウクライナのトパーズは、つい最近でも鉱物雑誌のミネラで表紙を飾っており、青と橙のグラデーションが夕暮れの空を思わせる不思議な色合いが魅力です。

「石・即・買」と言ったばかりですが、標本ごとに色の比率や形状に差があり、幾つも魅力的な標本があったため、散々どれを選ぶか迷って、ようやく帰り際に決めて購入。

f:id:cetriolo:20231210224720j:image(29g、蝕像で表面全体が鱗の様になっている。夕暮れの空の様でノスタルジックな雰囲気。)

と、ここで時間的にも体力的にも限界が来て終了。

今回の池袋ショーの感想としては、5月の新宿ショーの時よりも海外業者さんのお店の標本がかなり安くなっている気がしました。円安が一時期よりも落ち着いたからか、ツーソンショーの前に在庫を減らしておきたいという時期的な理由からかは分かりませんが、自分が学生だった頃のミネラルショーの価格帯に戻りつつある様な…そんな印象を受けました。

あと2日開催されていますので、興味のある方への参考になれば幸いです。

ちなみに会場で2000円以上購入すると福引きが出来ますが、案の定ハズレでした。

春日鉱山の苦灰石

昨日の中宇利鉱山では、物理的に痛い目を見たので、

とにかく楽で安全に、それでいて良い感じの石が拾いたい…

という腑抜けになった自分は、色々調べた結果、岐阜県にある春日鉱山に石拾いに行く事にしました。

春日鉱山は苦灰岩スカルンの鉱山で、稼働時は苦灰石や珪灰石等を採掘していたようです。今でもそれらに加え、鉄苦土スピネルや斜ヒューム石等が拾えるとの事。

なお春日鉱山は、鉱山と言ってもズリに行くための藪漕ぎや山登りは必要なく、鉱山側の河原が石拾いスポットとなっています。しかもその河原に到達するにはアスファルト舗装済みの道を2〜3分歩くだけ!という超親切仕様。夢グループのCMなら、保科さんが「すご〜い❤︎うれし〜い❤︎」と合いの手を入れてくれるレベルで、今の自分にはちょうど良い難易度なのでした。

さて、そんな超親切仕様の石拾いスポットの河原に到着。木々の葉も色づき始め、非常に気持ちの良い場所です。

f:id:cetriolo:20231029171344j:image(いい感じの場所)

辺りを見渡すと、河原の殆どの石は苦灰石。寧ろ苦灰石以外の石を探す方が難しい程です。

f:id:cetriolo:20231029172636j:image(苦灰石だらけの河原)

f:id:cetriolo:20231029173040j:image(こちらは拾った石、横約5cm)

更によく見ると、まれに繊維状で絹状光沢のある珪灰石も落ちています。

f:id:cetriolo:20231029173142j:image(柔らかそうだが意外に硬くてしっかりしている、横5.5cm)

と、30分程度河原の石を観察するだけで、苦灰石と珪灰石を見つけることが出来ました(因みに鉄苦土スピネルと斜ヒューム石は、結局よく分かりませんでした)。

拾う石を厳選し、苦灰石と珪灰石をそれぞれ1つだけお土産として持ち帰ることにしました。

帰宅後、UVライトを照射してみると…

f:id:cetriolo:20231029180346j:image(昔の結婚式の引出物に入っていた「鶴の子餅(紅白すあま)」を思い出すカラーリング)

苦灰石は桃色に、珪灰石は薄黄色に蛍光するというおまけ付きでした。

今までいくつかの場所に石拾いに行きましたが、こちらはおそらくTOP3に入るくらい難易度の低い石拾いスポットだと感じました。

ただ、この春日鉱山に行くまでの道は、カーブが続いたり細くなったりする箇所がある一方で、交通量は結構あり、さらに人気のルートなのかロードバイクで走っている方が多いので、運転には気を付ける必要があります。

転がる蛇紋岩、君に枯葉が降る

久しぶりに糸魚川へヒスイ拾いに…と思いきや、土日はどちらも雨。もちろん雨だとヒスイが拾えないというわけではありませが、悪天候の中頑張って拾えなかった時のガッカリ感が半端ないので、ヒスイ拾いは諦めて、天気の良さそうな愛知県の中宇利鉱山へと中宇利石を探しに行くことにしました。

1976年に発表された日本産新鉱物の中宇利石。自分にとっては、かつて名古屋ショーだったか京都ショーだったか忘れましたが、同好会系のお店で鉱物標本を購入した際に、オマケで頂いた事があるという思い出のある石です。その頃は外国産鉱物ばかりに目が行っていたので「何か地味な石だな」と思ったのですが、今思えば国産鉱物の中ではカラフルというか、派手な方ではないかと思います。

中宇利鉱山は新城市にありますが、読み方はシンジョウではなくシンシロ。妙に耳に残ります。因みにサカナクションの3rdアルバム名もシンシロ。

さて、中宇利鉱山に到着。池の傍のハイキングコースの様な道を10分程度歩いた先に、ズリがありました。

ここのズリは結構な傾斜になっており、この傾斜を5mくらい登った先に抗口があります。ただ、この日は既に採集者の方が何名かいらしており、坑口付近で採集をされていたため、そこから離れた場所にあるズリの斜面で中宇利石を探すことにしました。

蛇紋岩だらけのズリなので、滑りやすくなっています。

f:id:cetriolo:20231029185653j:image(蛇紋岩は油を塗った様にツルツルしていて滑るので注意)

…と言っている側から滑落。その際大きな石に左の眼窩周辺をぶつけてしまいました。

幸い大怪我にはならなかったものの、時間と共に腫れと痛みが出てきたので、石拾いを中止することにしました。

…が、崖に落ちてもヒラタケを持って上がってきた藤原陳忠の如く、帰り際にいくつかの中宇利石と孔雀石を見つけ、気に入ったものを1つづつ拾ってきました。

f:id:cetriolo:20231029202340j:image(鮮やかな孔雀石)

f:id:cetriolo:20231029202351j:image(水色の部分が中宇利石)

f:id:cetriolo:20231029211725j:image(中宇利石の針状結晶)

後から知りましたが、ここは以前に鉱物採集に来た方の死亡事故が起きているそうです。

中宇利鉱山は比較的アクセスしやすい場所にあり、スマホの電波も入るので、今も沢山の方が採集に訪れている場所ではありますが、やはり自然と触れ合う趣味には常に危険が伴います。

これからの季節、熊との遭遇や路面凍結等の危険が予想されますので、石拾いに出掛ける際は、出来るだけ十分な装備をし、危険を感じたらすぐに中止するようにしなければ…と思ったのでした。