新年明けてから3月末までは仕事が忙しくなるため、この時期は毎年出かける元気がなくなるのですが、折角の3連休なので、今回は玻璃長石を探しに和歌山県太地町へ行く事にしました。
この産地の玻璃長石は、大阪地域地学研究会による「宝石探し2(東方出版)」でも紹介されており、この本を読む限りでは比較的簡単に拾えそうな印象です(※)。
※このブログにおける拾った石の産地等については、一般販売・流通している書籍等により公になっている情報のみ記載しております。なお、古い書籍の場合、出版後に採集が禁止になっている場所が多くありますので、必ず最新情報の確認をお願いします。
さて、上記書籍の情報を頼りに、玻璃長石の産地に到着。
自分が今まで石拾いに行った場所は、山を歩いてガマ掘りをしている方からすれば楽な産地ばかりだと思いますが、それでも周りに民家等はなく、スマホの電波も入るか入らないか微妙な場所ばかりでした。
しかし、この玻璃長石の産地は、民家のすぐ脇にあるちょっとした露頭です。しかも露頭と言っても、高さのある崖ではなく、何というか、よく田舎の道路脇や裏山なんかに小さな観音堂や地蔵堂が置かれていたりしますが、雰囲気的にもサイズ的にもそんな感じの小さな露頭なのでした。
(小さな露頭)
足元には、風化してボロボロになった花崗岩の真砂土と、風化せずに残ってそこから外れた玻璃長石が落ちています。
(殆どがカールスバッド双晶となっている)
普通の鉱物産地と異なり、民家が何軒もすぐ傍にありますので、熊やヒルとの遭遇も、遭難や電波が圏外になる危険もありません。また、お目当ての玻璃長石もどんぐりや銀杏を拾う要領で簡単に拾えます。
ですから自分のようなぼっち・ざ・ろっく(石)には丁度良い産地ですが、趣味の仲間達とワイワイ楽しみながら探したい方や、採集は岩石ハンマーを振るってなんぼという方には向かない場所でもあります。
とは言え、あまりにも民家が近いのが気になります…。知らない人から見れば、コンタクトレンズを落としたわけでもなさそうなのに、何やら地面を凝視している不審者に過ぎません。近隣の方に御迷惑になってもいけないので、気に入ったものを厳選して拾い、15分程度でここを後にする事にしました。
(洗浄後。サイズは1cm〜2cm前後。上中央はムーンストーンと呼んでも良さそうなシラーがある。)
ところで太地町と言えば、一般的には玻璃長石ではなく、クジラ・イルカの町として知られています。太地町の捕鯨については様々な意見がありますが、時間もまだありますので、「太地町立くじらの博物館」に寄ってみました。
(よくあるイルカショーとは異なり、イルカの生態や形態のちょっとした解説がある)
博物館は広いので、半日〜1日かけて見るくらいのボリュームです。水族館のような水槽や、イルカ・クジラによるショー等も行われていますが、やはりここは博物館。館内にはイルカの胎児、クジラの眼や臓器と言った部位ごとの液浸標本が沢山ありました。
やや話は逸れますが、自分の地元はイルカを食べる地域でしたので、子供の頃は食卓にイルカの煮物がよくありました。独特の香りがあるので、夕方学校から帰って玄関を開ける前に「おっ!今日の夕飯はイルカだな」と分かるのです。大学生になり地元を離れて、初めてイルカを食べる地域は少ないのだと知り、逆に驚いたくらいでした。
そんなですから、他県出身のクラスメイトから「水族館でイルカを見たら『美味しそう』だと思うのか」という質問を受けた事があります。確かに、イルカを食べる文化圏ではない人からすると、素朴な疑問だと思うのですが、その時の自分はちょっと地元の文化レベルが低いと馬鹿にされたように感じて「ふれあい牧場で子牛や子豚を可愛がっている観光客にも同じ質問をするのか、それと同じだ」と、今思えば感じの悪い返事をしてしまいました。
ただ、そんな自分ですら、博物館の液浸標本は衝撃的で「うっ…」と感じました。ただ、最近の博物館は綺麗になった一方で映像やパネルばかりになって、こういう液浸標本を見る機会は減ったように感じますので、来館者に色々考えさせる貴重な展示だと思います。
(…と複雑な感情になった後で、ちゃっかり白いハナゴンドウに餌やりをする)