雑多拾いもん

捨てる神あれば拾う神あり… 「博多通りもん」ならぬ、雑多な「拾いもん」について備忘録がてら綴っています。

長石はどこへ消えた?

唐突ですが、自分の好きな石の一つに「長石」があります。長石はグループ名ですので、色々な種類がありますが、その中でも特にカリ長石は、モダンな造形と双晶の多さが魅力的だと感じます。

名古屋ミネラルショーで、いくつかの立派なバベノ式双晶のカリ長石を見かけましたが、一周会場を回っている間に良いなと思っていたものは買われてしまって以来、長石への執着は高まる一方…。

という事で、今日は長石を探しに某ペグマタイト産地へとやって来ました。

また情報はネット頼り。とは言え、有名な場所は既に採取禁止になっていたり、先人達に採集し尽くされていたりで、来ては見たものの、なかなか石探しに適した場所が見つかりません…。

最近では、立派な鉱物標本を短時間でゲットしている動画等がSNSYouTube等に沢山アップされていますので、ソロの初心者でも簡単に見つけられると錯覚してしまいますが、多くの場合、産地の詳しい情報をそれなりに得ている事が前提になっているものだと思われます。

鉱物趣味の仲間や知人のいない自分の場合、そもそも得られる情報が少なく、ふわっとした情報から産地を探すところからスタートなので、なかなかスムーズには行きません(だからこそ、「ソロで鉱物採集やボトルディギングをしてみたい」という初心者の方に向けて、自分のリアルな失敗や成果等を伝えていくというのが、このブログの趣旨の1つでもあります)

さて、仕方がないので、それっぽい露頭や崖を探しながら不審者の如くウロウロしていると、人気のある産地からは大分離れた林道の奥に、真砂土の広がった小さな荒地を発見。少し気になったので、ちょっとだけ何か落ちていないか見る事にしました。

真砂の中に小さな長石や水晶でも落ちていれば…と思いますが、残念ながら特に目ぼしいものは見当たりません。あるのは細かい石英粒、風化した長石のカケラ、オロナミンCの瓶の破片等です。

たまたま見つけた小さな荒地に大したものがあるわけないか…と、帰る事を考え初めていると、木の根元に2cm程の水晶かガラス片か一見不明の透明な塊が落ちているのに気付きました。

f:id:cetriolo:20231123164524j:image(ガラス片か水晶か)

拾い上げて見ると、結晶面が確認出来たため、少なくともガラス片ではなさそうです。

f:id:cetriolo:20231123134952j:image(上部が王冠のようなトゲトゲした形)

ただ、水晶よりもズシっと重く、水晶よりも冷たそうな透明感があり、条線の向きも水晶と異なる感じが…。水晶であれば形が良くないのでリリースするところですが、何となく水晶以外の石かも知れないと思ったのでキープし、引き続き周辺を見て回ります。

10分後、近くの水溜りの中に川擦れのような状態になった煙水晶が落ちている見つけましたが、それ以降は特に変わったものも無く、熊と遭遇してもいけないので、30分程で探すのを諦めて帰宅の途に着きました。

f:id:cetriolo:20231123135437j:image(色もサイズも良いが、水溜りの中で擦れたと思われる部分が少々残念)

帰宅後、あの透明な石を洗剤で洗浄し、比重を測ったところ、何と3.59もありました。通りで重みを感じるはずです。

これによって、この透明な石は水晶ではなくトパーズであると判明。洗浄後によく見てみれば、頭のトゲトゲした部分や胴の凹凸部分は、割れや欠けによるものではなく、それぞれが蝕像(溶解によって結晶面に生じた腐食像)だったのでした。

f:id:cetriolo:20231123160834j:image(15g、縦1.6cm×横2.3cm)

以前に岐阜県の川でトパーズ探しをしましたが、その際に見つけたトパーズと比較すると、今回のトパーズはずんぐりしていてボリュームがあります。

cetriolo.hatenablog.com

え?長石の話はどこへ?

そんなもの ウチにはないよ…

という事で、長石を探しに行ったのですが、長石の代わりに蝕像トパーズと川擦れ煙水晶を拾って帰ってきたのでした。

黒曜石を探しに

(前回のあらすじ)「石ふしぎ大発見展」で、欲しかった標本が目の前で他の方に買われて凹んだ後、長野県和田峠の黒曜石が販売されているのを見て急に欲しくなってしまい、3連休をいい事に「なら拾いに行くぜ‼︎」と翌日長野県まで黒曜石を拾いに行く事を無計画に決めたのでした。

ノリと勢いだけで、京都から今度は長野県までやって来ました。標高が高い上、雨が今にも降り出しそうな天気も相まって非常に寒く、冬用のジャケットを羽織って丁度良いくらいです。

f:id:cetriolo:20231012222948j:image(雨が降りそう)

ちなみに長野県の和田峠と言えば、黒曜石よりも照りのある満礬柘榴石が有名ですが、過去に一部の採取者による酷い掘り返しがあったらしく、その産出場所一帯は黒曜石も含めて現在採集が禁止されています。自分が掘ったり割ったりせず、あくまで「拾うこと」に徹しているのも、出来るだけ産地を荒らしたくないという気持ち(と楽して良いものをゲットしたい)からですが、まぁ拾うのも掘るのも求めている物は一緒なので、同じ穴の狢である事には変わりありません。

さて、黒曜石については、和田峠周辺…と言ってもかなり広範なエリアにわたって落ちており、また場所によって拾える黒曜石のタイプが異なるとの事。因みに和田峠周辺の黒曜石には

  1. ゼリーのような透明感のあるタイプ
  2. 透明感のないツヤツヤ漆黒タイプ
  3. 白のクリストバル石が含まれたタイプ
  4. 桃色のクリストバル石が含まれたタイプ

があるようですが、2と3は既に購入品等を持っているため、今回自分が探すのは1の透明感のあるタイプです。

取り敢えず、多くの方が黒曜石を拾われているメジャーな場所で探そうと思い、ネット等の情報を頼りにハイキングコース入り口の駐車場に車を停めて歩くと、

f:id:cetriolo:20231012123130j:image(あっ!)

…普通に駐車場の空き地やハイキングコースの畦道に落ちていました。

f:id:cetriolo:20231012124425j:image

という事で、道路の周辺を15分程度見ただけでも普通に黒曜石が沢山落ちているので、特に藪や林に入ることもないまま、サイズや形が気に入ったものを5つ厳選し、拾ってきました。

f:id:cetriolo:20231012124917j:image(大体4〜5cm程度、右上の大きなものは10cm程度)

今回拾った場所には、透明感のあるタイプしか落ちておらず、クリストバル石が入ったタイプ等は全く見当たりませんでした。逆に、帰りがけに峠の麓付近にあった空き地を覗いた時には、透明感のないタイプしか落ちていませんでした(帰宅後に色々調べると、どうやらクリストバル石の入ったタイプは、もっと山の中に近いエリアで見つかるようです)

ちょっと離れただけで落ちている黒曜石のタイプがガラリと変わるのは興味深いことです。

f:id:cetriolo:20231012125257j:image(特に透明感のある2つ)

黒曜石は日本各地で産出され、地元の畑でも小さい頃に拾った事がありますが、やはりここの黒曜石は有名なだけあって、テリや美しさには他の地域で産出されるものとは差があると感じます。

それにしても、段々と秋が深まって来ました。この時期が1番、石拾いが楽しい季節ではないでしょうか。

石ふしぎ大発見展2023京都ショー

今年も石ふしぎ大発見展(通称「京都ショー」)に行って来ました。

会場前には長蛇の列。人々の熱に当てられ、自然と期待が高まります。

f:id:cetriolo:20231009191819j:image

しかし、初っ端からガッカリする出来事が。

ショー開始早々、老舗系のお店で、珍しい産地の某鉱物の標本を沢山、しかもリーズナブルな価格で販売されているのを発見しました。その中からどれか1つを買おうと思いつつ、他にもどんな標本を置いているかを見ていたところ、おそらく転売系の方でしょうか、隣で見ていた方がその産地の同タイプ標本をごっそり購入して去っていったのでした…。まさか1人の方が同じ産地の同タイプ標本をまとめ買いするとは想定外で、沢山あるから大丈夫だろうと思い、キープしていなかったのです。

がーんだな…出鼻をくじかれた…

と、豆かんの店で煮込み雑炊を食べ損ねた井之頭五郎の気分になった後、他の標本を見ても大して心動かなくなってしまい、結局大きな買い物をしないまま京都ショーは終了。

取り敢えず、今回はラピス(ドイツの鉱物雑誌)のバックナンバーと、以下の標本を購入。

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f:id:cetriolo:20231009210437j:image(3.5cm程の小さなポイント)

f:id:cetriolo:20231009210451j:image(条線がハッキリしている)

今回のショーでは、メキシコのベラクルスやゲレロといった有名産地の紫水晶をリーズナブルな価格で売っているお店が目立ちました。今までゲレロの紫水晶は1つも持っていなかったので、今回小さなポイントを購入。テリが良く、ダメージも無い点が気に入っています。

f:id:cetriolo:20231009212028j:image(柘榴石は3つ)

鈍い銀色のグラファイト中に柘榴石が入っている標本。なお、母岩のグラファイトは柘榴石が露出するように削られており、裏面からライトを当てると鮮やかに赤く光ります。あまり見かけない標本だったので購入。

f:id:cetriolo:20231009212127j:image(王蟲の眼を思わせるためか、標本の側には王蟲のフィギュアが置かれていた)

  • 緑泥石付き水晶(ネパール産)

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緑泥石にコーティングされたトゲトゲの水晶。同産地の水晶には透明感のあるものや先端が鋭利になっていないもの等、色々なタイプがあり、自分は植物っぽく見えるものを選択。

  • 天河石(長野県産)

f:id:cetriolo:20231010121621j:image(消え入りそうな薄い水色)

日本でも山梨県の黒平や長野県の田立では水色の天河石が産出されます。かねてからどちらも欲しいと思っていましたが、今回は田立の天河石を購入。黒平の天河石もいくつかの店舗で販売していましたが、今回は見送りました。

という事で、毎度毎度、気合い入れて行く割には何か細々とした石やら雑貨やらを購入して終わり…というパターンが定着しつつある京都ショーですが、また今年も同じパターンで終わってしまいました。

なお、今回のショーで買おうか迷った末に見送った石として、和田峠の透明感のある黒曜石があります。かなり買おうか迷ったのですが、この手の標本は自分で拾ったものの方が愛着が湧くだろうと考え…急遽明日、拾いに行く事に決めました。まぁ、言うなれば、豆かん屋を出た後に洋食屋に入り直した井之頭五郎の気分というわけです。

さて、こんな行き当たりばったりな状態で、無事に黒曜石を拾う事は出来るのでしょうか…。

青のすみか

まだ残暑の厳しい日が続いていますが、流石にもう真夏の様な暑さではないだろうと考え、ヒスイ拾いにやってきました。前回のヒスイ拾いの記事が6月ですから、かれこれ3ヶ月以上ヒスイから離れていた事になります。

天気は曇りで時折晴れ間が広がりますが、午後からは雨という事なので、午前中のみが勝負です。

早速、久しぶりのヒスイ棒とウェーダーという出立ちで、釣り人に配慮しながら波打ち際を歩きます。

f:id:cetriolo:20231001184259j:image(石はそこそこ出ている)

晴れ間が広がった時は、長袖&ウェーダーではまだまだ暑く、服装選びに失敗した…と感じましたが、波だけは既に秋模様。結構強めの波で、波の中を見るには厳しい状況です。

この日は、灰色ヒスイや他の鉱物が混ざったヒスイ(所謂「混じり」)ならいくつか落ちていたものの、2時間歩いても自分の中で「拾いたい」と思うレベルのヒスイは見つかりませんでした。

久しぶりに糸魚川に来たというのに、手ぶらで帰るのも嫌だと思いつつ、いよいよ体力もなくなって来ました。

モチベーションが下がった状態でとぼとぼ歩いていると、波打ち際の黒い石の隙間に、怪しい白い石がチラッと見えます。

急いで黒い石をヒスイ棒で退かすと、ようやくこの日初めての色付きヒスイを発見する事が出来ました。

f:id:cetriolo:20231001212723j:image(31g、比重2.95)

この白地に水色のクレヨンで模様を描いた様な独特のヒスイは、おそらく「横川の青ヒスイ」と呼ばれるタイプでしょう。このタイプのヒスイは、比重が低く透過もないものが多いため、青ヒスイの中では人気がやや劣るというか、通好みのイメージのあるヒスイです。しかし、自分の中でのエンカウント率は低めな上、今回見つけたヒスイはサイズもそれなりにあるので、今まで自分が拾った同タイプの中ではNo. 1となりました。

結局、昼頃には天気も崩れてきたので、この日はこのヒスイだけを拾って終了としました。

ところで、今年に入ってから拾ったヒスイを見返していると、昨年に比べて青ヒスイが多い様に思います。たまたまなのか、海流等の関係なのか…理由はよく分かりません。

f:id:cetriolo:20231001212746j:image(今年に入ってから拾った青ヒスイ。青と言っても様々なバリエーションがあって面白い。)

一方で、自分は相変わらずラベンダーヒスイは全然拾えません。特に「妖精ラベンダー」と呼ばれる陶器の様な白地に紫色が入るタイプのヒスイは未だに拾えた事がありません。

小さな石で良いので、いつか綺麗な紫色が入った妖精ラベンダーを拾ってみたいものです。

紫外線ライトの選び方(蛍光鉱物用)

先日、新しい紫外線ライトを購入し、紫外線ライトによって鉱物の蛍光にかなり差が出る事を知りました。

そこで今回は「蛍光鉱物を入手したのは良いけれど、どんな紫外線ライトを買えば良いのかよく分からない」と考えている方…がどれだけ居るか分かりませんが、とにかくそういう方の為に、紫外線ライトを選ぶ際の注意点やおすすめのタイプ等を紹介していこうと思います。

因みに当初、タイトルをYouTuberっぽく「最強!おすすめ紫外線ライトはこれだ!」にしようかと迷いましたが、一気に胡散臭くなりそうなのでやめました。

さて、この記事を読まれている方はおそらく鉱物好きかと思いますので、それを前提にお話していきます。

まず、紫外線はその波長の長さによって、

  1. UVA(315〜400nm)、いわゆる長波
  2. UVB(280〜315nm)
  3. UVC(100〜280nm)、いわゆる短波

の3つに分類されています(詳しくは下記気象庁HPを参照)

気象庁|紫外線とは

蛍光鉱物は紫外線の短波で蛍光するものと、長波で蛍光するものがあり、どちらの波長で蛍光するか明記されて販売されています。紫外線ライトも短波タイプと長波タイプが販売されていますから、手持ちの蛍光鉱物に合わせて普通に欲しい方を購入すれば良い…のですが、ここに大きな落とし穴があります。

というのも、上記の分類に従えば、短波はUVC(100〜280nm)、長波はUVA(315〜400nm)という事になるのですが、蛍光鉱物や紫外線ライトの販売においては、その分類で長波(315〜400nm)に該当する波長についても「短波」と表示されているケースが往々にしてあるからです。

これは、恐らく紫外線ライトのシェアが原因です。現在、世に出回っている多くの紫外線ライトは395nmで、一部の紫外線ライトが365nm(375nmも有り)。280nm以下の紫外線ライトに関しては、殺菌用等にごく僅か販売されているだけになります。

つまり、短波(UVC)のライトの販売数が極めて少ないため、395nmと365nmはどちらも分類上は長波(UVA)に該当するにも関わらず、短い波長の365nmの紫外線ライトの方を「短波の紫外線ライト」と呼ぶケースが発生し、そのライトで蛍光する鉱物も「短波で蛍光」と表記されるようになったという訳です。

しかしそれにより、「短波」がどちらの意味で使用されているのか分からなくなってしまいました。

例えば、オルミアイトという石。これは「短波で赤く蛍光する」という説明で入手しましたが、実際に短波(250nm)の紫外線ライトを購入して照射したところ、全く蛍光しませんでした。もちろん長波(395nm)の紫外線ライトも同様で、「こりゃ蛍光しないハズレのオルミアイトだな」と思っていたのですが、今回購入した365nmの紫外線ライトを照射したところ、真っ赤に蛍光しました。

f:id:cetriolo:20230904221017j:image(395nmと250nmはライトの色が反射しているだけで、蛍光はしていない)

またベニトアイトも「短波」で蛍光する鉱物として有名ですが、「短波で赤色に蛍光」と紹介されている事もあれば「短波で青色に蛍光」と紹介されている事もあります。長らく謎でしたが、これは「短波」をどちらの意味で使用しているかによる違いだったと思われます。

f:id:cetriolo:20230904222056j:image(紺色の三角形の結晶がベニトアイト。395nmでは蛍光しないが、365nmだと真紅に、250nmだと明るい青になる。)

他にも、紫外線ライトの波長の違いにより、蛍光の仕方が異なりましたので、以下に画像を貼っていきます。

  • リチア輝石

f:id:cetriolo:20230904222529j:image(395nmは殆ど蛍光なし、365nmは人参の様なオレンジ色、250nmは弱いグリーンの蛍光)

  • 亜鉛鉱(自然光下で薄茶色の部分)

f:id:cetriolo:20230904222810j:image(395nmは一切蛍光せず、365nmと250nmはあまり差はない)

  • (右上から時計回りに)玉滴石・アダム鉱・スピネル・白鉛鉱

f:id:cetriolo:20230904223136j:image(玉滴石のみ全てで蛍光。また長波であっても395nmより365nmの方が4つとも蛍光が激しく、ポム爺さんでなくても「強すぎる」と感じる。)

という事で、蛍光鉱物や紫外線ライトを購入する際は、「短波/長波」の表記よりも、「何nm(で蛍光する)か」が重要だという事が分かります。また、今回の検証の結果から、一番幅広く蛍光鉱物の蛍光を観察出来てベストなのは365nmの紫外線ライトではないかと思われます。

もっとも、395nmの紫外線ライトは1000円以下で販売されているのに対し、365nmの紫外線ライトは安いものでも4000円以上しますので、「取り敢えず長波で蛍光する石から集めたい」という方は395nmの紫外線ライトでも良いかも知れません。

短波(280nm以下)の紫外線ライトについては、ベニトアイトの青い蛍光のように、「その波長でしか見られない蛍光色を確認したい」という理由がなければ、その波長で蛍光する鉱物も少ないため、特に購入を見送っても良いと思います。

恋路海岸の霰石

先日スペインの霰石をミネラルショーで購入したばかりですが、日本にも霰石の産出する場所が数多くあります。

中でも石川県鳳珠郡能登町恋路海岸の霰石は「鉱物採集フィールド・ガイド(草下英明/草思社)」でも紹介され、今も多くの方が霰石を拾いに海岸を訪れている有名産地です。ただし、霰石(が入った玄武岩)は、海岸の潮が引いた時間帯に現れる岩場に落ちており、潮が満ちていると上手く探せないとの事。

能登半島の先端、しかも干潮時を狙うとなると、遠方から行く自分にはかなりのハードルの高さ。しかし、冬の日本海はそれ以上にハードルが高くなるため、夏に行くしかないだろうと考え、意を決して恋路海岸に行く事にしました。

この日の干潮は午前10時。10時到着を目指して、まだ暗い中出発したのですが、途中で道の駅に寄ったりと道草をして行ったため、着いたのは11時過ぎとなってしまいました。

さて、産地の海岸を覗くと…

わわっ!!…殆ど岩場がありません。

露出しているのはほんの数カ所で、既に多くの場所が波の下となっていました。

f:id:cetriolo:20230903175144j:image(残っていたのは一畳程の岩場が2ヶ所程…)

ちょっと来るのが遅かったのかも知れませんが、取り敢えず岩場で落ちている玄武岩を見ていきます。

因みにこの場所、めちゃくちゃフナムシが居ますフナムシはこちらの一挙一動にいちいち驚いて、四方八方にサササッと逃げていきます。そんなフナムシの様子を「人間を怖がっちゃって何だか可愛いな」と思える方は問題ありませんが、フナムシの見た目や動きが苦手な方だと、この産地は辛いかも知れません。

さて、霰石の入った玄武岩ですが、意外にも結構落ちています。多くは黄色い球状ですが、薄紫色のレアなタイプも見付ける事が出来ました。

f:id:cetriolo:20230903180435j:image(山形県ゆるキャラ「ペロリン(下記リンク参照)」に似ている玄武岩。黄色は霰石、青緑色の部分はセラドン石。)

www.yurugp.jp

f:id:cetriolo:20230903213822j:image(薄紫色の霰石、断面がそこまで風化していないので誰かが割った石の破片かも知れない)

f:id:cetriolo:20230903214221j:image(直径1cm以上ある大きな球状の霰石が3つ。まるで木の穴の中に隠れているリスの家族のよう。)

なかなか良い感じの霰石が拾えたので、一旦休憩しようと車に戻ると、丁度そのタイミングで一気に雨が降り出してきました。雨雲レーダーを見ても、天候が直ぐに回復しそうになかったため、名残惜しくはありましたが、そのまま石拾いを終了して帰る事にしました。

因みに恋路海岸では、球状の葡萄石も玄武岩中から産出されるそうです。実は帰宅後に詳しく調べるまでは、上の写真にある黄色い球状の石は葡萄石だと思い込んでいましたが、図鑑で確認したところ、同産地の葡萄石は霰石よりも色味がやや薄緑色のようです。また、何より硬度が異なりますので、もし迷った際は、カッターで傷が付くかどうかで確認する方法もあります(傷が付いたら霰石)。

桃鉄ではカード売場やロボット研究所になっているイメージのある能登半島ですが、また機会があればゆっくり訪れてみたいと感じたのでした。

名古屋ショーで現金採拾

中部エリア最大のミネラルショーと言えば、名古屋ミネラルショー(通称名古屋ショー)。その2日目に参加してきました。名古屋ショーは日程が合わなかったり、コロナ禍等もあったりで、かれこれ参加するのは10年ぶりとなります。

さて、国内のミネラルショーの中でも、名古屋ショーは同好会や個人の出展者が多く、そういったお店では鉱物愛好家が自ら採集した標本を販売しているというのが、このショーの面白いところだと思います。

f:id:cetriolo:20230828001859j:image

故に、他の国内ショーとの違いとしては

  • 国産鉱物、特に東海地方や西日本の鉱物が多い
  • 価格帯が全体的にリーズナブル(ワンコイン標本が沢山ある)
  • 客層としては、年配の男性及び理科趣味のお子さんが多い
  • 出展者と石談義をするお客さんが多い

と言ったところでしょうか。アクセサリー系やルース系のお店は少なく、他のショーでは外国産標本をメインで扱っているお店でも、客層を反映してか国産鉱物を多めに販売しています。

f:id:cetriolo:20230828001911j:image(ショーの様子)

会場へは10時過ぎに到着。昔に比べると、会場も1フロア追加されて広くなり、お客さんの数も激増していました。

また、10年前には国産鉱物のお店で石を見ていたのは年配の男性客ばかりだった印象がありますが、今回は老若男女問わず国産鉱物を手に取っていました。それだけ、この10年の間にネットやSNS等によって鉱物趣味が多くの方に広がり、国産鉱物に魅力を感じる人が増えたという事なのでしょう。

さて、今回の自分の欲しいものリストは

です。

個人出展者のお店を中心に回り、優柔不断な自分は夕方まで悩みに悩み続け、今回は5つの標本を購入しました。

f:id:cetriolo:20230828004504j:image(今回購入した標本)

槙ノ川のボトリオ石は見つけられませんでしたが、以下、購入した標本を紹介していきます。

f:id:cetriolo:20230828004910j:image(横約15cm、縦約12cm)

この日最初に購入したのは、欲しいものリストどころか国産鉱物ですらない硫黄のデカ標本。個人出展者のお店で、ひっそりと足元のケースで格安販売されていました。ショーに来て早々に、大きい上に脆い硫黄の標本を購入して持って歩くのは躊躇われましたが、1点しかない標本だったので覚悟を決めて購入。

f:id:cetriolo:20230828010209j:image(温泉の匂いがする)

シチリア島の硫黄は綺麗な事で有名ですが、こちらの標本は母岩の白い方解石と鮮やかな黄色の硫黄の取り合せが気に入りました。ただ、この購入により、自分の保有している外国産標本の中で1番大きな標本が硫黄になってしまいました。

f:id:cetriolo:20230828010607j:image(まりもと呼ばれるクーク石(リチウムを含む緑泥石)が入っている)

まりも水晶は欲しいものリストに挙げていた石ですが、沢山のお店で取り扱いがあったため、かなり悩みました。こちらはやや透明度は低いですが、まりもの入り方と形状の良さから、この標本を選びました。

  • スペインの霰石(アラゴナイト)

f:id:cetriolo:20230828012230j:image(両端は薄灰緑色で、中央に向かって薄紫色になっている)

茶色のモロッコ産霰石はよく見かけますが、今回のショーでは、スペイン産の薄紫色の霰石が複数のお店で販売されていました。沢山採れるのでしょうか、殆どの標本がリーズナブルな価格帯でした。こちらも散々迷った挙句に、紫水晶の様な透明感とグラデーションの美しさからこちらを購入。

f:id:cetriolo:20230828082148j:image(両錐になっている)

欲しいものリストで挙げていた石の1つ。パキスタン産のオイル入り水晶の様に、紫外線で内包物が蛍光するという水晶で、名古屋ショーで是非ともゲットしたいと思っていたのでした。会場では1店のみで取り扱っていたように思います。ただ、同産地の標本がいくつも並んでおり、予算の都合も相まって優柔不断な自分は随分と迷ってしまったのでした。

長時間悩んだ挙句、ようやく中くらいの価格帯の石を選択。しかし選択後、妥協したことにより後悔してきた過去を思い出し、また最初から悩み始める始末。最終的にはそれより高価格帯ではあるものの、サイズも大きく形状も両錐で、黄色とオレンジの点々が入り混じった星空のような蛍光の石を選び直す事に(かなり店頭で悩んでいたため、お店の方や他のお客さんのご迷惑になってしまったと猛省。そんな自分にも親切にご対応して下さったお店の方には、この場で再度お礼申し上げます)

さて、帰宅後に蛍光を見ようと紫外線ライトを照射したところ、店頭で見た星空のような蛍光が全く見られません。後から気付いたのですが、お店で蛍光を確認する為に貸して頂いていた紫外線ライトは、手持ちの安価な紫外線ライト(395nm程度)とは異なる波長のタイプ(365nm程度)だったのです。上記の波長の紫外線ライトは持っていませんので、あの星空のような蛍光は当面お預けとなりました。

※9月3日追記

とうとう365nmの紫外線ライトを購入。下の写真の様に395nmと365nmでは蛍光に大きな差が見られました。

f:id:cetriolo:20230903155208j:image(左が395nm、右が365nm)

f:id:cetriolo:20230903155551j:image(蛍光はオレンジ色と黄色の2色が確認出来る)

紫外線の波長の違いによる蛍光については、別途記事にする予定です。

f:id:cetriolo:20230828102705j:image(小さく黄緑色の苔みたいな部分が燐灰ウラン石)

欲しいものリストでは岡山県人形峠の燐灰ウラン石を挙げていましたが、人形峠の燐灰ウラン石は人気があるためか、国産鉱物の地味系標本の中ではやや高額。購入を迷っていると、産地の異なる燐灰ウラン石が小学生のお小遣い価格で販売されていたので、ついこちらに飛び付いてしまいました。

ルーペで見ることを前提としている標本は、多くの場合メイン鉱物の場所を示す矢印が付いているため、自分はこういった標本を「矢印標本」と勝手に呼んでいます。何となくですが、矢印標本を購入するのはハイレベルな石マニアの方というイメージがあり、にわかマニアの自分には敷居が高く、今まで矢印標本を購入した事はありませんでしたが、今回初の購入となりました。

f:id:cetriolo:20230828103541j:image(矢印の位置がちょっと適当なのもご愛嬌)

久しぶりの名古屋ショー、とても楽しめましたが、やはり国産鉱物を見ると購入するより自分で拾ってみたくなります。

また涼しくなったら石拾いや瓶拾いを始めたいと思ったのでした。