先日、新しい紫外線ライトを購入し、紫外線ライトによって鉱物の蛍光にかなり差が出る事を知りました。
そこで今回は「蛍光鉱物を入手したのは良いけれど、どんな紫外線ライトを買えば良いのかよく分からない」と考えている方…がどれだけ居るか分かりませんが、とにかくそういう方の為に、紫外線ライトを選ぶ際の注意点やおすすめのタイプ等を紹介していこうと思います。
因みに当初、タイトルをYouTuberっぽく「最強!おすすめ紫外線ライトはこれだ!」にしようかと迷いましたが、一気に胡散臭くなりそうなのでやめました。
さて、この記事を読まれている方はおそらく鉱物好きかと思いますので、それを前提にお話していきます。
まず、紫外線はその波長の長さによって、
- UVA(315〜400nm)、いわゆる長波
- UVB(280〜315nm)
- UVC(100〜280nm)、いわゆる短波
の3つに分類されています(詳しくは下記気象庁HPを参照)。
蛍光鉱物は紫外線の短波で蛍光するものと、長波で蛍光するものがあり、どちらの波長で蛍光するか明記されて販売されています。紫外線ライトも短波タイプと長波タイプが販売されていますから、手持ちの蛍光鉱物に合わせて普通に欲しい方を購入すれば良い…のですが、ここに大きな落とし穴があります。
というのも、上記の分類に従えば、短波はUVC(100〜280nm)、長波はUVA(315〜400nm)という事になるのですが、蛍光鉱物や紫外線ライトの販売においては、その分類で長波(315〜400nm)に該当する波長についても「短波」と表示されているケースが往々にしてあるからです。
これは、恐らく紫外線ライトのシェアが原因です。現在、世に出回っている多くの紫外線ライトは395nmで、一部の紫外線ライトが365nm(375nmも有り)。280nm以下の紫外線ライトに関しては、殺菌用等にごく僅か販売されているだけになります。
つまり、短波(UVC)のライトの販売数が極めて少ないため、395nmと365nmはどちらも分類上は長波(UVA)に該当するにも関わらず、短い波長の365nmの紫外線ライトの方を「短波の紫外線ライト」と呼ぶケースが発生し、そのライトで蛍光する鉱物も「短波で蛍光」と表記されるようになったという訳です。
しかしそれにより、「短波」がどちらの意味で使用されているのか分からなくなってしまいました。
例えば、オルミアイトという石。これは「短波で赤く蛍光する」という説明で入手しましたが、実際に短波(250nm)の紫外線ライトを購入して照射したところ、全く蛍光しませんでした。もちろん長波(395nm)の紫外線ライトも同様で、「こりゃ蛍光しないハズレのオルミアイトだな」と思っていたのですが、今回購入した365nmの紫外線ライトを照射したところ、真っ赤に蛍光しました。
(395nmと250nmはライトの色が反射しているだけで、蛍光はしていない)
またベニトアイトも「短波」で蛍光する鉱物として有名ですが、「短波で赤色に蛍光」と紹介されている事もあれば「短波で青色に蛍光」と紹介されている事もあります。長らく謎でしたが、これは「短波」をどちらの意味で使用しているかによる違いだったと思われます。
(紺色の三角形の結晶がベニトアイト。395nmでは蛍光しないが、365nmだと真紅に、250nmだと明るい青になる。)
他にも、紫外線ライトの波長の違いにより、蛍光の仕方が異なりましたので、以下に画像を貼っていきます。
- リチア輝石
(395nmは殆ど蛍光なし、365nmは人参の様なオレンジ色、250nmは弱いグリーンの蛍光)
- 珪亜鉛鉱(自然光下で薄茶色の部分)
(395nmは一切蛍光せず、365nmと250nmはあまり差はない)
- (右上から時計回りに)玉滴石・アダム鉱・スピネル・白鉛鉱
(玉滴石のみ全てで蛍光。また長波であっても395nmより365nmの方が4つとも蛍光が激しく、ポム爺さんでなくても「強すぎる」と感じる。)
という事で、蛍光鉱物や紫外線ライトを購入する際は、「短波/長波」の表記よりも、「何nm(で蛍光する)か」が重要だという事が分かります。また、今回の検証の結果から、一番幅広く蛍光鉱物の蛍光を観察出来てベストなのは365nmの紫外線ライトではないかと思われます。
もっとも、395nmの紫外線ライトは1000円以下で販売されているのに対し、365nmの紫外線ライトは安いものでも4000円以上しますので、「取り敢えず長波で蛍光する石から集めたい」という方は395nmの紫外線ライトでも良いかも知れません。
短波(280nm以下)の紫外線ライトについては、ベニトアイトの青い蛍光のように、「その波長でしか見られない蛍光色を確認したい」という理由がなければ、その波長で蛍光する鉱物も少ないため、特に購入を見送っても良いと思います。