雑多拾いもん

捨てる神あれば拾う神あり… 「博多通りもん」ならぬ、雑多な「拾いもん」について備忘録がてら綴っています。

鉱物雑誌あれこれ

鉱物ファンは、少し前まではかなりニッチな趣味との評価だったように思います。

例えば、他人に鉱物が好きだというと、鑑賞石や水石系のお年寄りっぽいイメージか、はたまたパワーストーン系のオカルト好きっぽいイメージのどちらかにカテゴライズされてしまうことが多かったのです。

しかし今は、地学好きという第3のカテゴリーが用意され、そこにスムーズに入れてもらえる事が増えました。

鉱物や天体等の自然科学をテーマにしたハイセンスなカフェや雑貨屋も増え、全国各地でミネラルショーが開催されるなど、鉱物標本を目にする機会が大分増えたようにも思います。

この鉱物ファンの周知やイメージアップに1番貢献したのは、おそらくブラタモリでしょう(2番は宝石の国?)。

さて、そんな鉱物ですが、海外では随分前からメジャーな趣味の1つとして市民権を得ており、「ミネラロジカルレコード(アメリカ)」「ラピス(ドイツ)」と言った鉱物ファン向けの専門雑誌が存在します。

ミネラロジカルレコードについては一時期購読しており、美しい表紙や付録の紙製下敷きを毎回楽しみにしていたものです。中でも、南アフリカやインドの鉱山で鉱物を採掘する様子や鉱山集落の住民の生活を伝える記事は読み応えがあり、それらを通じて自分の手元にある海外産鉱物標本を一層魅力的に感じる事が出来ました。

日本でも「ミネラ」という鉱物専門雑誌が隔月で発刊されています。ただ、ミネラはどちらかと言えば国産鉱物寄りの雑誌なので、海外の鉱山や新鉱物についての記事は少なく、また特集内容やページのデザインもややご年配の方向けであるように思います(ちなみにヒスイ特集は非常に力が入っていて、すぐ売り切れてしまう程の人気です)。

出来れば日本でも、海外産鉱物寄りで美しい標本の写真・海外の鉱山やショーの様子が分かる読み物が載った雑誌が出て欲しい…そんな風に長らく思っていましたが、とうとう先日理想の鉱物雑誌が出ました。

それが…こちら。

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都会的なカルチャー雑誌「ブルータス」が鉱物特集をしてくれたのです。

もちろん今回の号のみ鉱物特集なだけで、決して鉱物専門雑誌になったわけではないのですが、もはや内容は日本版ミネラロジカルレコード。

特に良かった記事は

  • パキスタンのアクアマリン鉱山での採掘取材
  • ツーソンミネラルショー買付密着取材

で、どちらも取材にお金も時間も掛かっていることが伝わる内容でした。

また、雑誌の殆どが鉱物特集ページであり、よく雑誌にありがちな「半分は特集とは無関係な広告ページ」ではないのにも驚きます。身長が伸びる方法も、ナンパが上手く行く香水も、美女と一緒にお札のお風呂に入るオジサンも載っていません。いるのはヴァレンチノを着こなしたサカナクションの山口一郎氏です(魚民の自分としては突然の鉱物とサカナの取り合わせにビックリ)

日本でも海外産鉱物寄りの雑誌が出て欲しいのですが、日本唯一の鉱物専門雑誌であるミネラですら、今までに何度も休刊していることに鑑みると、いまの鉱物ファン人口の市場規模ではきっと継続的に出版するのは難しいのでしょう。

またコロナ禍で、ここ数年はミネラルショーが中止になったり、海外業者が来日出来なかったりと、海外産鉱物市場がやや元気がないように思います。かくいう自分も最近は専ら国産鉱物の自己採集にハマり、海外産の標本を現金採集することが減りました。

それでも、やはり海外産鉱物標本には国産鉱物とはまた違う魅力があります。また、海外業者とのミネラルショーでのやり取りは、まるで海外の市場に来たようで楽しいものです。

f:id:cetriolo:20220622075502j:image(南アフリカのメッシナ鉱山産のアホー石入り水晶。初めてミネラルショーに参加して購入した思い出の標本。この年は新たなポケットが見つかったとかで安価に出回っていた年でした)

f:id:cetriolo:20220622060832j:image(イギリスのロジャリー鉱山産の蛍石、太陽光の紫外線でも蛍光するので気に入っている)

f:id:cetriolo:20220622061035j:image(メキシコ産の異極鉱と菱亜鉛鉱、どちらかのみ買おうとしたが選べず、500円だったので結局2つとも買ってしまった標本)

f:id:cetriolo:20220622124302j:image(イタリア産の方解石。美味しそうでお気に入り標本の一つだが、見せた人達からはカビっぽいともれなく不評)

ブルータスには、今後も年一くらいで良いので、鉱物を特集してもらえたら嬉しいと思っています。