雑多拾いもん

捨てる神あれば拾う神あり… 「博多通りもん」ならぬ、雑多な「拾いもん」について備忘録がてら綴っています。

金平糖と毒薬

国産鉱物の有名産地を調べていると、既に絶産していたり、荒らされたことで現在は採集不可能になっていたりする産地というものに度々出くわします。また、絶産とまでは言えなくとも「かつては簡単に拾えたけれど、今は殆ど拾えない」と言われる場所も多くあります。

今回採集に向かうのは福井県赤谷鉱山。ここは世界的にも珍しい金平糖型の自然砒(通称:金平糖石)が採集出来ることで有名な場所ですが、ネットの情報によれば「ここ数年、金平糖石は殆ど見つからなくなった」との事。

しかし、先日の京都のミネラルショーでも結局購入を見送ったということも相まって、自分の中での金平糖石への執着は一層強くなり、「ならば自分で拾いに行く」という結論に至ったというわけです。

さて赤谷鉱山に到着。この産地は鉱山と呼ばれているものの、周辺に鉱山の遺構は全くなく、川沿いの雑木林のごく一部がズリ場になっているだけの場所なのでした。そんな場所ながら、最近でも多くの人が採集に訪れていると分かる形跡が数多あるのは、やはりここが有名産地であることを物語っています。

f:id:cetriolo:20221025220727j:image(ズリ場全体が沢になっているため、泥で汚れやすい)

早速、そのズリ場の土砂の中から落ちている金平糖石を探していきます。ズリ場は斜面なので、へばり付きながら金平糖型の黒くて丸っこい石を探すというゆる〜いボルダリング的な採集スタイルです。

なお、ここでの1番の厄介者は、ヒルでもアブでもなく杉の実金平糖石は大抵1〜2㎝でトゲトゲした黒っぽいボール状なのですが、杉の実とサイズや形状が似ているため、泥の多いこのズリ場では間違えてしまうのです(ただ、手に取ると杉の実は軽いので分かります)

喜び勇んで杉の実を拾ってはガックリして捨て…の繰り返しをしていると、杉の実の色とは明らかに異なる、赤みを帯びた黒い金属光沢のある小さな塊が落ちているのを発見しました。

f:id:cetriolo:20221025221811j:image(これは怪しい…)

小さいながらも重みがあり、急いで失くさないようポケットに仕舞います。

結局その後は目ぼしいものは見つからず、雨も降り始めたため、輝安鉱の標本を追加で拾って終了としました。

帰宅後、あの怪しい石を洗って確認。

f:id:cetriolo:20221025223031j:image(約1.5cm、大きめの梅干の種のようなサイズ)

石英っぽい母岩に包まれていますが、このトゲトゲした結晶の形状と金属光沢、そしてずしりとした重み(自然砒の比重は5.7)から、これは自然砒であると判断。今は金属光沢が確認出来ますが、すぐに酸化で黒くなってしまうらしく、その点は少し残念です。

オーソドックスな金平糖ではなく、言わば殻付き金平糖ですが、ようやく念願の赤谷鉱山の金平糖石をゲット。これで暫くは自然砒への執着は薄れそうです(欲深い自分の事なので、そのうち「私はまだ…神の一石を極めていない!」と理想の形状をした金平糖石を探しに行くのでしょうが…)

また、輝安鉱は結晶の形が分かるものが拾えました。

f:id:cetriolo:20221025224052j:image(輝安鉱の部分は約1cm)

なお、自然砒は表面に三酸化二ヒ素(いわゆる亜ヒ酸)を生じることがあり、これは強い毒性があるため、取り扱いに注意が必要です。

金平糖型のファンシーな見た目に反して有毒だというのが、この赤谷鉱山の自然砒の魅力なのかも知れません。

言いたい事も言えないこんな世の中じゃ…とポイズンな金平糖石を眺めるのでした(因みにこの反町隆史のポイズンネタが通じるのは20代半ばまでだそうですが、個人的にはZ世代にも広めて行きたいですね)