ここの黄鉄鉱は「針道の黄鉄鉱」と呼ばれ、スペインのナバフン鉱山で見られる様な立方体の結晶をしたものをはじめ、八面体や十二面体など多様な結晶形のものが拾える事で有名です。
詳細な産地の場所は、多くの書籍や他の方のブログ等に掲載されていますので、ここでは割愛しますが、この産地は今まで自分が訪れた中では最も到達するまでが大変だったと感じました。
まずは山道を1.5kmほど歩いて黄鉄鉱の産地まで行きます。この山道はしっかり舗装された広めの道で、一見車で行けそうな感じなのですが、進むとすぐに車止めがあるので歩いて行くしかありません。
しかし、この道が結構ハードです。かなり傾斜のある上り坂がずっと続きますので、1.5km程度とは思えない疲労感を与えてきます。自分は富士山を始め、いくつかの山に登ったことがありますが、今回は登山と違って、山頂の景色が目的でないことに加え、周辺の景色もずっと単調で飽きることが、この疲労感の一番の原因だと推察します。
前日に読んだ「デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場(河野啓/集英社)」の影響からか、さも自分がエベレストへの登頂チャレンジをしているかのような気持ちになってきました。
さて、自分の中でエベレスト扱いとなった山道を登りきり、ようやく産地と思われる場所に到着。白い粘土状になったセリサイトの中に、0.5〜1cmの黄鉄鉱がキラキラしているのが見えます。
(白い部分が粘土)
粘土の中にお目当ての黄鉄鉱が含まれているため、この粘土を袋などに入れて持ち帰り、自宅等で粘土を洗い流して黄鉄鉱を採集するという方法を取る方が多いようですが、粘土を持ち帰るのも大変なので、自分は粘土から露出しているものや落ちているものを拾うことにしました。
(色々な結晶形の黄鉄鉱が見つかる)
(酸化被膜によるものだろうか、虹色の黄鉄鉱もあった)
ところで、この場所はかつて鉱山だったようで、この黄鉄鉱が見つかる場所からわずか1分程奥に進んだ斜面には、坑口がありました。
(奥は埋まっている)
この坑口付近では辰砂が拾えるという情報もありましたが、自分は見つけることは出来ませんでした。
さて、帰りはまたこの山道を下っていくわけですが、今度は落葉で滑るという罠が待ち受けています。一般的なスニーカーよりもグリップ力の強いアウトドア用のシューズを履いていましたが、それでも何回か滑って転びそうになりました。
家に帰って黄鉄鉱を水洗い。結晶の隙間に入り込んでいた粘土は、簡単に歯ブラシで水洗いをするだけで綺麗に落ちます。
(洗浄後)
黄鉄鉱自体は色々な場所で見かけますが、ここまで綺麗な結晶のものが沢山拾えるのは珍しいと思います。
しかし、意識低い系拾い人の自分は「もっと楽していい感じの石を拾いたい…」と感じた産地なのでした。