雑多拾いもん

捨てる神あれば拾う神あり… 「博多通りもん」ならぬ、雑多な「拾いもん」について備忘録がてら綴っています。

コロダイン神薬

フジファブリックの名曲「若者のすべて」のフレーズが思い起こされるような、秋の気配を感じる曇り空の比較的涼しい日。

こういう日は瓶拾い…と思うのですが、廃村のハケで3つのペロペロを発見して以降、見つけた瞬間テンションが上がる瓶が拾えていません。

掘れば出てくるのかも知れませんが、廃村のハケはともかくスーパーハケは民家も周辺にある神社の敷地内なので掘ることは出来ませんし、そもそも楽したいので掘らずに拾いたいのです。

新たなハケを探すか、それともスーパーハケを念入りに探すか…悩んだ末に怠惰な自分はまたも安易にスーパーハケを選びました。

しかし、ただフラフラ探すだけではもう瓶の面子が変わり映えしないので、今回はちゃんと手袋をし、ガラス片や印判皿の破片が層のように重なりあって落ちている場所を、重点的に見ていきます。

1時間くらい探し、取り敢えず見つけた水色の音羽染の瓶、ノーエンボスの両口式点眼瓶、古そうなおはじきを見つけて拾いました。しかし、やっぱり大興奮するほどの瓶は見つかりません。

意地になって大きな瓦の破片を退かし、土に埋もれかけている大きな酒瓶を取り除くと、奥から茶色っぽい小さな薬瓶が見えたので引き抜きました。

土が付着してよく見えない部分もありますが、どうも「コロダイン」とのエンボスがあるように見えます。マジか…。

コロダイン…それは明治から昭和初期にかけて販売された気付薬の一種で、一時期はモルヒネクロロホルムなどを含んでいたという神薬と並んで色々と妖しさやアングラ感のあるアレな薬。いつかは手に入れたかったけれど、そもそも神薬に比べると落ちている可能性が低そうで、ハナからゲットは諦めていた瓶です。

早く洗って本来の色やエンボスを確認したい!と速攻で探すのを打ち切り、近くの川で瓶を洗いに行きました。

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洗った事で、コロダインは4面にエンボスがあり、色も茶色ではなくオリーブ色である事が判明。

家に帰って素性調査。

以前拾ったみやこ染と同じように、こちらもメジャーな染料瓶。スクリューなので新しめの瓶かも知れません。爽やかなブルーです。

  • 両口式点眼瓶

透明でノーエンボスのため詳細不明。作りがしっかりしているので新しそうです。

  • おはじき

古いおはじきは形が歪で、模様がワッフルの様な網目状のものが多いように思いますが、これは波模様。薄いペパーミントグリーンの色と雑な作りが気に入っています。

f:id:cetriolo:20220509225628j:image(運動靴で踏んだみたいな模様)

  • コロダインの瓶

こちらの瓶、表には「米田コロダイン神薬」、向かって右は目盛、左には「厄除大師堂」、裏には「米田製薬所」とエンボスがあります。

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ネットで検索すると、同商品の色違いを拾っている方がいらっしゃいましたが、販売されていた時代や米田製薬所の詳細までは分かりませんでした。

繰り返しになりますが、コロダインはイギリスで生まれた薬で、それが明治時代に日本にも伝わり、日本の製薬会社でも作られるようになったという代物です。気付薬として人気があり、配置薬にも入っていたようですが、今では市販薬に使用禁止のモルヒネクロロホルムが使用されていました。その後、このコロダインの成分からモルヒネを抜き、ほぼ同じ成分にて作られたものが神薬ということのようです(詳しくは下記リンクにて)。

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そもそも神薬とコロダインは似たような薬とはいえ、別の商品だと思っていたのですが、「コロダイン神薬」とはこれ如何に。

つまり「リポビタンユンケル」や「モンスターエナジーレッドブル」みたいな商品名ということ?当時は景表法や薬機法もありませんから、こういうよく分からない欲張りセットの商品名でも良かったのでしょう。効くんだか効きすぎて危ないんだか分からないこの薬、宮沢賢治の童話「よく効く薬とえらい薬」という話を思い出します。

大ペロペロ以来のお気に入り瓶ゲットで、今回は満足のいく瓶拾いとなりましたが、このスーパーハケ、これだけ通ってまだこんな瓶が拾えるとはどれだけのポテンシャルを秘めているのか…。