雑多拾いもん

捨てる神あれば拾う神あり… 「博多通りもん」ならぬ、雑多な「拾いもん」について備忘録がてら綴っています。

ミネラルショーの歩き方②〜失敗体験〜

先の記事では、一般的なミネショの失敗事例をご紹介しましたが、こちらの記事では自分の黄金体験…ならぬ失敗体験をお話していこうと思います。

  • アホー石入り水晶の失敗

自分が好きな石の1つにアホー石入り水晶という石があります。このアホー石入り水晶は南アフリカのメッシナ鉱山という場所のみで産出(アホー石自体は他国でも産出されます)され、ほんの短期間だけ市場に流通した後、同鉱山は閉山。

さて、自分が初めてミネショに行ったのは、かれこれ10年近く前。その時自分は受験生、小遣いは参考書や予備校の模試等に消えていましたので、なけなしの1万円を持って新宿ショーに参加したのでした。

その年の新宿ショーでは、たまたまアホー石入り水晶の新たなポケットが見つかったとかで、沢山の業者が安価なアホー石入り水晶の標本を持ってきていました。

お金のない自分は、1万円前後の中サイズのアホー石入り水晶のクラスターに惹かれつつも、他の石も購入したかったため「そのうちお金が自由に使えるようになったら、もっと良いのを買えばいいか」と、妥協して3cm程度のミニクラスターを4500円で購入したのでした。

f:id:cetriolo:20230604214010j:image(これがその時の購入品、レミング左手の法則を彷彿とさせる形)

しかしそれ以降、アホー石入り水晶は忽然と市場から姿を消し、見かけても当時と同品質の物は無くなった上に、金額だけは当時の3倍〜10倍以上の価格になっていました。あの時迷った1万円前後のアホー石入り水晶と似たような品質とサイズのものは、現在10万円前後となっています。

もちろん上の写真のアホー石入り水晶も、色が濃くて非常に気に入っているのですが、あの時1万円前後のアホー石入り水晶を購入していれば…と、未だに10年近くも引きずっているのでした。

  • 葡萄石(マリ産)の失敗

上でお話した新宿ショーにおいて、例のアホー石入り水晶を購入した後に、今度はマリ産の葡萄石を見つけました。

マリ産の葡萄石と言えば、葡萄石の名の通り黄緑色のマスカットの様な丸々とした形状でお馴染みの石。そして、その時に見つけたのは、まるでミネラロジカルレコードの表紙を飾る様な、黒緑色の緑簾石に美しくて大きな球状の葡萄石がいくつも共生しているというものでした。お値段は3300円。

しかし上で述べたように、軍資金の1万円のうち、既にアホー石入り水晶で半分近く使っています。ここでこれを購入してしまえば、もう他に何も買えなくなってしまう…。

という事で一旦は見送ったのですが、やはり後から欲しくなって見に行くと後の祭り。既に店頭からは消えていました。

仕方なく、1500円で別の葡萄石を購入しましたが、自分の優柔不断さを恨んだのでした。

f:id:cetriolo:20230604220549j:image(その時に購入した葡萄石、これはこれで気に入っているけれど…)

  • 球状蛍石(インド産)の失敗

インドでは白い水晶の上に乗った球状の黄色い蛍石が産出され、8年くらい前にその色合いや形状から「目玉焼き蛍石と呼ばれてちょっとしたブームになりました。

自分もその面白い形状に惹かれて欲しくなったのですが、丁度ブームの最中だったため、どのショーでも瞬時に完売している状況でした。

そんな中、池袋ショーで念願の球状蛍石を見つけます。焦っていた自分は、「こりゃラッキー」と石を良く確認せずに、急いで購入してしまいました。

しかしその後になって、この球状蛍石には、表面が研磨されて美しく整えられたものが多い、という事を知りました。そして自分の購入した石を確認すると…明らかに削って成形した跡が…。

f:id:cetriolo:20230618104549j:image(蛍石自体も研磨されて不自然な形になっている上に、蛍石が立体的に見えるよう周囲の水晶まで削られている…)

自然が作り出した結晶の美しさが鉱物標本の価値の1つであると思っている自分にとっては、いくら人の手が加えられてより美しくなったとしても、自然が作り出したという感動が失われるため、どうにも興味が持てなくなります。

原因は情報弱者だった自分にありますが、せめて販売時に研磨している旨表示されていたら…と思う気持ちがなくもありません。現在でも、このインド産の球状蛍石はそういった表示がされないまま販売されているものもあります。

「研磨された球状蛍石」は、残念な思い出として自分の記憶に残ったのでした。

ちなみに最近になって、ようやく表面が研磨されていない球状蛍石を手に入れる事が出来ました。この標本はとても気に入っています。

f:id:cetriolo:20230604225035j:image(こちらは球状の蛍石の上に細かい水晶や方解石が成長しており、未研磨という事が分かる)

という事で、実際に自分のミネショでの苦々しい失敗をご紹介してきましたが、是非他山の石と思って頂ければと思います。